おたよりリレー 内山 孝子さん(修士課程19回生)
内山 孝子さん(修士課程19回生)
神戸市看護大学
基礎看護学 准教授
大学院30周年に寄せて
看護管理実践をする中で、看護管理実践の言語化と認定看護管理者を目指し、東日本大震災があった2011年に、修士課程看護管理学領域に入学しました。修士課程では7人の同期に恵まれ、看護管理について日々、濃厚なディスカッションを繰り返したことや沢山のおしゃべりは楽しいものでした。実践コースであった私は2年次には職場に戻って、研究課題のデータを収集し修士論文に取り組みました。看護管理者として「看護とは何か」の問いに、自分の言葉で明快に言語化できない自分に気づきました。自分の言葉で看護の定義ができなければ、看護管理者とはいえないと考えた私は、その問いの答えを見出す糸口は看護倫理にあると考え、続けて博士後期課程で学びたいと高田早苗先生(基礎看護学)に相談させていただきました。
博士後期課程では、これまでクリティカルケア領域で患者の生命と向き合ってきた経験から、医療の枠でしか看護を考えることができていなかったことに気づきました。このことから生活の場に視野を広げ、特別養護老人ホームにおける看取りケアのフィールドワークに取り組みました。これまでの価値観を一度棚上げして、目の前の事象をそのままデータ化することは簡単なことではありませんでした。苦労をして書き上げたフィールドノーツをゼミに持参すると、高田先生と川原先生は、まるでその場に一緒に居たかのようにその事象のもつ意味が読み解けるよう指導してくださいました。フィールドで当たり前に行われているケアから、看護師がなすべきことは対象者の日常生活を何事も起こらないように整えることで、その人らしさが保たれ人間的な生活を支援することができる、その人の持てる力を見出し信じその力を損なわないようにすることこそが看護の使命であると確信を持つことができました。先生方のご指導に感謝しております。
現在は、この学びを、これから看護を担う初学者に伝えていきたいと奮闘中です。改めて、日本赤十字看護大学大学院の開設30周年をお祝いするとともに、今後のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。