おたよりリレー 鴨川 郁子さん(修士課程17回生)

鴨川 郁子さん(修士課程17回生)

公益財団法人がん研究会 有明病院
がん看護専門看護師

大学院30周年に寄せて

 私が大学院へ進学するきっかけは一人の患者様の言葉でした。その方は、「いろんな学問があって、いろいろな疾患があるけど、なぜ『がん』だけが『がん看護学』なんですか。」と言われました。私は、その時に「がん看護学」について話すことができませんでした。このことがきっかけで、大学院進学を目指しました。
 オープンキャンパスで院生室を見学した時、各領域のゼミ室ではなく、そこで学ぶ修士生が一つの部屋で過ごしていることに驚きと同時に「ここで学びたい」と思いました。いざ入学し院生室を見渡し、先日まで病院で業務していた時との景色との違いに「世の中、こんなに勉強している人がいるだなぁ」と思ったことを思い出します。そして、授業が始まると指定された本を読もうとするも、その内容が理解できず「日本語がわからない」状態で、辞書を片手に読み進めました。最初の授業で「知の構築」の本をそれぞれのグループで担当しましたが、なかなか「チ」と言われても「血」ばかりが頭に浮かんでしまい、「チ」と言われて「知」が最初に頭に浮かぶようになるまでには少し時間を要したことを思い出します。また、先生方から「患者さんとの現場経験は宝」との言葉に救われ、自分の中にもこれまでの経験という『宝物』があると思え少し自信が持てたことを思い出します。
 現在の職場へ就職し、たくさんのがん看護専門看護師の先輩方に出会い、いろいろな刺激やチャンスの場を頂きました。私は、とにかく頂いた仕事に向き合い続け、がん専門看護師を取得することもでき、気が付けば入職して13年目を迎えました。この間もいろいろな患者様に出会い『宝物』は増え続け、仲間もたくさんできました。
 ただ、私の中でいまだに学生として長いフィールドに出ているように感じることがあります。それは3.11の震災があり卒業式がありませんでした。そのため、院生の仲間や先生にこの経験を語りたいと、ふと思うことがあります。

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