おたよりリレー 坂井 志織さん(修士課程11回生)
坂井 志織さん(修士課程11回生)
淑徳大学
看護栄養学部看護学科 准教授
研究者としての基礎を育んだ修士時代
大学院生時代の思い出といえば、やはりディスカッションの熱さ/圧さ/厚さです。私の所属領域では毎週院生の研究についてのゼミが開催されていました。ゼミは毎回2~3時間続き、修士1年の頃は内容の理解ができないながらも、先輩方の研究への熱意にただ圧倒されていました。そして夏には泊りがけのゼミ合宿があり、そこには博士の院生も加わります。議論の内容はさらに難解になり、早朝から夜中まで白熱した議論が続きました。“時間”についての哲学的な議論に触れたのもこの頃が初めてであり、博士の院生の思考の厚さに新たな世界を見せられた感じがしていました。
また、他領域の同級生との議論も授業内外で毎日していました。専門や臨床経験が異なる仲間と話すことはとても刺激的であり、知らなかった世界に触れる楽しさがありました。研究についても自主ゼミなどを開き、互いに意見しあうことの重要性を学びました。博士課程はより専門的な研究方法で取り組みたいと考え他の大学院に進学しましたが、修士時代に様々な先輩方の研究姿勢に触れたこと、また仲間と徹底的に議論する態度が身についていたことが、博士課程での学際的な学びを可能にしてくれたと考えています。
このような充実した修士・博士課程での学びは大きな財産となり、私の今の活動を支え広げています。例えば、現象学的な方法で取り組んだ博士論文は、2019年に日本看護協会出版会から『しびれている身体で生きる』として出版されました。そして、この書籍がきっかけとなり2022年度の日本看護科学学会の学術集会大会シンポジストとして招かれたり、遠方の都市からも看護師向けの大きな講演を依頼されたりします。研究成果が色んな方々に届いていることを実感し、嬉しさと共に研究者としての責任を再認識する今日この頃です。また、日本看護科学学会の委員会活動を通して、全国の素晴らしい研究者らと知り合うことができ、今でも仲間として交流が続いており知的刺激を得ています。そして、科研費をはじめ外部の競争的研究資金も得ることができ、研究活動にも継続的に取り組んでいます。
大学院への進学は一見すると敷居が高いように思えるかもしれません。しかし、新たな思想に触れたり、看護以外の学問分野の研究者と出会えたりすることは、見える世界を広げ人間的成長をもたらします。探究したい事象がある方は、ぜひ大学院で学びあなたの世界を広げてみてください。